2016年9月 定例山行報告

北岳(3,193m)・G2+ : 9月3日(土)〜5日(月)

天候:1日目 晴れ時々曇り  2日目 晴れ後曇り時々雨  3日目 晴れ時々曇り

参加: 17名(視覚障害者5名,健常者12名)

コースタイム概略 : 
1日目:JR新宿駅(8:00)=特急=(9:28)甲府(10:00)→(11:53)広河原・昼食(12:40)・・・(15:50)白根御池小屋(泊)
2日目:白根御池小屋(5:00)・・・(8:30)肩の小屋(8:50)・・・(9:30)北岳山頂(10:10)・・・(10:40)肩の小屋・昼食(11:15)・・・(13:40)白根御池小屋(泊)
3日目:白根御池小屋(7:30)・・・<大樺沢二股を経由>・・・(11:25)広河原(12:00)→<途中下車、芦安温泉にて入浴、昼食>→(15:50)甲府・解散

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◆1日目、危なっかしい階段を登る◆ ◆1日目、白根御池小屋前で集合写真◆
◆2日目、背後は鳳凰三山◆ ◆2日目、肩の小屋は近い◆
<1日目>
JR甲府駅からバスに揺られること約2時間、広河原へ到着した。 ガスがかかり、湿気を帯びた空気が暑さを助長する。準備を済ませ、12時40分にいよいよ出発。
登山道入口の柵を入って吊り橋を渡るとすぐに不規則な石の階段が続き、徐々に急坂になった。 ぐんぐん登って行くと、丸太の梯子階段があったり、高い段差をよじ登ったり、バリエーションが豊富である。
時折、登山道の花に足を止め、名前を教えてもらい、触れさせてくれたので楽しめた。 「サラシナショウマ」「カニコウモリ」や「キツリフネ」「ヤマハハコ」「ハンゴンソウ」「タカネナデシコ」等が咲いていた。 細葉の「トリカブト」も群生しており、花は濃い紫色をしていると教えていただいた。根っ子はどんな形状をしているのだろう。 ふと、先日イタリア料理屋で食べた谷中生姜の生ハム巻きを思い出す。
15時50分、白根御池小屋に到着。 小屋の前の水場で、升に汲んだ水をいただいたら、キリッと冷えていてあまりの美味しさに驚いた。 この水は南アルプスの天然水と訊く。 かくして、3日間はこの水を使って顔を洗い、歯を磨き、山小屋とは思えないほど贅沢に水を使わせてもらったのだった。
白根御池小屋は居心地が良い。広々とした小屋内は掃除が行き届いていて清潔感があり、布団には真っ白なシーツが掛けてあった。 夕飯はお重に入ったおかずが数品と、ご飯とお味噌汁、そしてデザートまで付いていた。 特に気に入ったのは、キノコと野菜の炒め物がご飯に合って美味しかったこと。
夕食後、篠笛奏者の山崎氏によるコンサートが催された。 美しいメロディーに合わせて奏でられる笛の音、盛り上がる観客と共に穏やかに夜は更けていった。

<2日目>
翌朝は4時起床。準備を済ませ外へ出ると気温は16度、少し緊張した頬をひんやりした風が撫でていく。 皆が指差す方向に必死で目を凝らすと、濃紺の空に墨汁を流した様な真っ黒な北岳の稜線が見えた、気がした。
5時に登攀を開始する。のっけから急登の洗礼を受け、ゴツゴツ岩の石段が続く。 歩みを進め順調に高度を上げると、やがて空が白々と明けてきた。 振り向くと遥か遠く山々の稜線から目の覚める様な閃光が伸びて来て、周囲の頂稜を朱色に染め上げた。 頭上の空には雲一つ無く、絶好の登山日和が続きそうだ。
途中、登山道に咲く花々を楽しむ。「トウヤクリンドウ」や「ヤマホタルブクロ」「フジアザミ」が咲いていた。
樹林帯は徐々に低い木になり、やがて岩と石ころの世界になった。 快晴の空の下、仙丈ケ岳、鳳凰三山、八ヶ岳、富士山などが一望でき、方々からため息混じりの歓声があがる。 遥か眼下の谷に、真綿を引き延ばした様な雲海が見え、あまりの高さに足がすくむ。 この頃から、ガスが下から這い登って来るのが気になった。
8時30分、標高約3千メートル地点の、肩の小屋に到着。 小休止し、先を急ぐ。山頂までは193メートル、低山であれば鼻歌まじりで登れそうだが、ここでは酸素濃度が平地の3分の2程しかなく、上に向かえば更に低下し、体の動きや脳の動きが緩慢になるかもしれない。 気を引き締めて一歩一歩慎重に踏み出す。やがて、先を行く仲間の歓声が聞こえてきた。9時30分、遂に北岳山頂へ到着。
私にとってそれは驚くべき達成だった。山を始めてまだ1年足らず、六つ星の仲間と共に積んだトレーニング、サポーターの皆様から学んだ山岳知識、そのベースがあってこそ、ズブの素人の私がここまでやって来れたのだと思う。
山頂はガスに覆われていて、途中で見た周囲の山々は見えなくなっていたが、南アルプス固有の花「タカネビランジ」が、風に揺れていた。 淡いピンクのかわいい花だった。
10時10分、下山開始。肩の小屋まで一気に下り、昼食休憩の途中で、霧雨が降り出した。 雨具を着て小一時間ほど歩くと、陽光が雲の隙間から差し込んで気温が一気に上昇した。 衣類調整をして、一気に下山する。眼下に御池が見えてきた。 13時40分、白根御池小屋着。仲間達とハイタッチをして喜び合った。

<3日目>
最終日の3日目も快晴。出発前にみんなで池の周りを歩き、花や風景の写真を撮ったり、テントにいた青山学院大学ワンゲル部の30sのザックを背負わせてもらったり、優雅な朝の散歩を楽しんだ。
7時30分、小屋を後にし、大樺沢二股を経由して、広河原に11時25分に到着。 12時発のバスに乗り、途中下車して芦安温泉にて入浴をした。 温泉の食堂で、無事に北岳の登頂と、本日誕生日であったSさんを祝して皆で乾杯。
2泊3日の安全に配慮した山行を計画してくださった方々、サポートして下さった方々、一緒に登ってくれた視障者の方々、とても良い旅でした。 3日間、本当にありがとうございました。(N.K 記)

<担当者付記>
月曜が入った2泊の日程なので直前までサポーターが集まるかと心配だったが、皆様のお陰でしっかりしたサポート体制を組むことができ、また、 前日までの天気予報は「雨、午後は雷」と最悪だったが、予報ははずれて登頂当日の午前中は快晴となり、山々が見渡せる大展望が満喫できた。 そして登頂に成功。みんな、生き生きして、大満足の表情だった。(T.T 記)
◆2日目、頂上へあと10分◆ ◆2日目、頂上にて集合写真◆
◆3日目、白根御池の畔を散策◆ ◆3日目、大樺沢にかかる橋を渡る◆