2011年8月 個人山行報告

大日岳・立山三山(3,015m)・G4 : 8月24日(水)〜27日(土)

天候
25日 雨
26日 雨(夕方から晴れ)
27日 晴れ

参加: 5名(視覚障害者2名,晴眼者3名)

コースタイム概略 : 
25日 称名の滝入口−牛の首−大日平−水場−大日山荘
26日 大日山荘−大日岳−大日山荘−七福園−奥大日岳−新室堂乗越−剱御前小屋
27日 剱御前小屋−別山−真砂岳−富士の折立−大汝山−雄山−一の越−室堂

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◆剱御前小屋からの剱岳◆ ◆雄山頂上神社前で記念写真◆
[25日]
称名の滝入り口から登り始め1時間もしないうちにバラバラ大粒の雨が降り出した。
予報どおりとはいえ「あ〜あ」とため息が出る。
この先から修復された急な登山道が続く。
50センチ、40センチ、と大きな段差の連続で足が上がらなくなり、サポーターにぐっと引っ張りあげられやっと登っている状態。
もうきつくてきつくて、いつ終わるのか、先が思いやられる。
何とか大日平の端に着き、やっと息がつけた。
すごい立派な山小屋が見える、などといっていたが、これは谷を挟んだ弥陀が原のホテルだった。
大日平小屋に着いた頃、雨も小降りとなり、テラスを借りて早めの昼食にする。
重いバーナーを持ってきてくださったWさんのおかげで、温かいスープや本格ドリップコーヒーが飲めて、思いのほか贅沢なランチタイムとなった。
この先は沢を何度も渡り返す路だが水量が増えているため、靴の中に水を入れないよう気を使う箇所が増えてくる。
傾斜もきつくなり、足が上がらない。指示通りにすぐには動けず、紐を引っ張ることになってしまいサポーターをよろめかせてしまう。
ごめんなさい、みんな疲れているんですね。
雨でかすむなか、やっと小屋が見えた。
玄関に座り込みなんとか靴を脱ぐ。
何もかもぐっしょり、絞るほど濡れている。
寒くて仕方ないので、最後の日に着替えるつもりだった衣類に取り替えると気分も良くなった。
夕食はフライがメインで家庭的なもの。
夕食後のギター演奏が待ち遠しい。
この小屋のオーナーさんは富山でギター工房を営んでおり、其のお弟子さんは山小屋の仕事を手伝う決まりになっているとか。
大変見かけのよろしい青年は「僕は製作が仕事で演奏は趣味」と断って弾き始めたギターは心のうちをサワサワと風が渡っていくような、気持ちがおだやかになるものだった。
昨夜の寝不足と疲れと精神安定剤のような音楽のおかげで8時前にはぐっすり眠っていた。

[26日]
起きてみるとやっぱり雨。
ご来光どころではなく、きちんと朝食をとってから空身で大日岳に向かう。
おおむね緩やかに登り、山頂に着くと大日如来のいる祠があった。
50センチほどの小さいもので予想イメージと違った。
小屋に戻り奥大日岳に向かう。
今日は高低差も少ないので楽だろう、と考えていたがこれは大違いだった。
岩を経つってやっと通るようなところが何箇所もある。
また降り続く雨のせいで登山道は池のようになって靴の中に水が入ってしまう。
つらい路が続くうちに雷鳥が現れた。
私たちの前方をゆっくり歩いていく。
固まっていた心がほぐれていった。
奥大日岳山頂では一時的に雨が上がりしばらく周囲の山々を見分けることができた。
これから室堂乗越までは比較的なだらかな路で歩きやすかった。
途中でまたも雷鳥に出会う。
親子連れの間に割り込む形になってしまい、親鳥が心配そうに声をかけ、幼鳥はおびえた声で必死に親鳥に向かって鳴いている。
鳴き声のおかげで雷鳥の存在をはっきり感じ取れたがかわいそうなので早々に移動する。
雨も上がってきた。
室堂へのエスケープルート入り口に差し掛かったがあきらめて温泉に下ろうと言い出す人もいなかったので、予定通りに剱御前小屋に向かう。
ここからはただ普通に登る道で根気さえあれば大丈夫。
心配することもなく、小屋に着く。
この頃には空も大変明るくなり、剱岳までよく見えるようになった。
またまた靴下は絞るほどにぬれてしまったが空が晴れて気分も浮き立ってきた。
外に出たり談話室からまた今夜の部屋から剱や周囲の山々を眺めうきうきした時間をすごす。
次の目標に胸を躍らせている人もいた。

[27日]
朝、快晴である。すばらしい!天気でこんなに気分が違うのだ。
別山に向かう路でどうしたわけか道幅が極端に狭いほうの路に入ってしまう。
ハラハラしながら通過、その後はごく一般ルートで人の往来の激しいざわざわした様子になる。
道幅が狭い岩稜帯もあり通過待ちも多くなる。
この山行のテーマである立山三山に入る。
富士の折立から大汝山、雄山と思いのほか早く到着。
なんと雄山ではマラニック大会が催されていて座って休むところもないほどだ。
5年ほど前の全国視覚障害者登山大会の時と同じ状況である。
登山道から少し外れたところで山旅最後の昼食をとる。
登山というより観光地にでもきたような人・人・人の中を下る。
結構な急勾配の道を込み合って降りていくのには危険さえ感じる。
最後の最後で怪我はしたくないものだ。
一の越に着くとほとんど今回の山はお終いである。
三日間歩いてきた山容が大変くっきりとよく見える。
何度も立ち止まってはその稜線を思い返し眺めているとなかなか足が進まない。
さあ、早く山荘に行って三日間の汗を流しましょう。
◆チングルマの群生・新室堂乗越にて◆ ◆一行の前に現れた雷鳥◆